アウシュビッツ ― 2008/04/26 23:10
今日は昨日ホテルで申し込んだアウシュビッツのツアーに出かける。
朝7時から朝食。あまり期待していなかったが、スクランプルエッグも注文で作ってくれるし、コーヒーもうまくてびっくり。
ツアーのピックアップの9時15分までにまだ時間があったので、ユダヤ人地区カジミエーシュへ。ここは、映画「シンドラーのリスト」の舞台となったユダヤ人ゲットーがあった場所。戦前のポーランドには33万人の欧州最大のユダヤ人が住んでいて、その内の2割弱の6万人がクラクフに住んでいたという。
ちゃんとした観光地図がなかったので、迷いながら色々なシナゴーグ等の写真を撮って歩いた。
つい最近までは、この地区は観光客が入るようなところでなかったのだが、建物の復興が進み、しゃれたレストランやカフェ、ホテルが立ち並び、今ではクラクフで最もトレンディな地区に変身中。
ホテルにもどるとすぐに、ツアーの迎えのバンがきた。このツアーはアウシュビッツとビルケナウをまわるツアーで130ズルチ。町中には沢山のツアー紹介所があり、それによると90ズルチのツアーもあるが、多分これはビルケナウを含んでいないのだろう。同じバンに乗ったのはアイルランド人の男女2名づつのグループとイタリア人1名、自分を含めて計6名の団体。計6時間のツアー。
55キロ先のアウシュビッツに向う車の中で、ソ連軍の記録員が撮影したアウシュビッツ解放時のフィルム・写真をもとにしたドキュメンタリーをみた。あまりに残酷な出来事で、所々でみるに耐えなく、また吐き気をもよおしそうになった。戦争は人間を狂気にすることがよくわかる。ドイツ人に対する見方が変ってしまいそうで恐ろしい。日本軍も中国で同じようなことをしたのだろうか?それとも日本人はそこまで鬼畜になれなかったのだろうか?
アウシュビッツには1時間程で到着。そこで他のバスできた人たちと合流し、現地ガイドに従って収容所にはいる。春が訪れ、タンポポが芝生に咲いている中で、収容所はより残酷にみえる。
第2次大戦中、ナチス・ドイツ占領下の土地からユダヤ人、ポーランド人、ロマ、共産主義者、反ナチス活動家、同性愛者などが捕らえられ、各地にある強制収容所に送られた。そこから、この殺人工場ともいえるこの強制収容所に囚人達は送られてきた。ここで殺された人々の数は28の民族、150万人に上るといわれている。現在は、博物館として2度と同じ過ちを人類が犯さないようにと、当時行なわれた事がなんであったかを後世に伝えている。1972年にはユネスコの世界遺産として登録された。
収容所の入口には「Arbeit Macht Frei (働けば自由になれる)」という文字が掲げられている。あまりに皮肉だ。
アウシュビッツ収容所は28棟の囚人棟から成り立っている。1次は2万8000人もの囚人が同時に収容されていたこともあるという。ここには、囚人を餓死させる「飢餓室」や狭い部屋に数人の人間を閉じ込める「立ち牢」などが残されている。また、10号棟と11号棟の間にある壁は「死の壁」と呼ばれ、銃殺に使われた。
元囚人棟だった建物の中には、ナチスが収容者から没収した生活用品が公開されている。おびただしい衣服、トランク、ブラシ、靴等。遺体から取り外された義足、メガネ等が展示されている。特に気分が滅入ったのは膨大な量の人間の髪の毛を見たとき。収容所に収監されると同時に男女ともに髪を切られ、その髪はカーペットの材料等として払い下げられた。
アウシュビッツ強制収容所には最初のガス室と焼却場が残されている。どのような手順で殺戮がおこなわれたがよくわかる。ドイツ人流の効率的な殺人手順に従って、ここには1日に340人を焼却できる能力があったという。ここは、ビルケナウにさらに大規模なガス室・焼却場が作られて以降、次第に使われなくなったという。ガス室の中ではひとのうめき声がきこえるようだった。
次に向ったのは、アウシュヴィッツ強制収容所から約2キロ離れたところにあるビルケナウ。ここはアウシュビッツよりさらに大規模な強制収容所で、一大殺人工場として機能していた。
1941年に建設が開始され、1945年にソ連軍に開放されるまでに百数十万人の命が奪われたという。
「死の門」と呼ばれた入口のゲートをくぐると、現在は見渡す限り草の茂るなかでレンガと木造のバラックが点在している。
ここでは、バラックの中を見学できる。さらに、鉄道で運ばれてきて、降り立った場所でガス室行きか、バラック行きかが選別された場所に建つ。8割がたが直接ガス室に送られたという。ユダヤ人の子供は問答無用で直接ガス室行きだったときき、本当に切ない。ナチスが開放直前に証拠隠滅のために爆破したガス室と焼却場の跡が生々しく残されている。
見学の最後は、国際慰霊碑。その脇に20カ国の小さな慰霊費が並ぶ。
もともとアウシュビッツに来るかどうかは少し迷いがあった。しかし、人からは是非一度見ておくべきと薦められ、今回それが実現した。本当に重いものを見た。人類が犯した過ちを目の当たりにして、2度とこんなことを起こすべきではないと強く思う。戦争がいかに悲惨かが本当によくわかる。
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